鰯(いわし)

・源氏物語の作者紫式部がある時いわしを食べたところ非常においしく、もう一度食べたいと思っていました。ところがいわしは卑しい(いやしい)に通じると平安貴族からは嫌われていたので、夫の藤原宣孝が留守の時こっそり焼いて食べました。しかし夫宣孝がほどなく帰ってきてしまい、部屋にこもっている臭いでたちまち露見してしまいました。「こんな卑しい魚を食べるとは・・・」と叱る夫に、式部は和歌でこう返しました。「日の本に はやらせ給う いわしみず 参らぬ人は あらじとぞおもふ」 <日本で流行っている岩清水八幡宮にお参りしない人はいないように、こんなおいしい いわしを食べない人はいませんよ>これ以降、宮廷の女房言葉で鰯のことを「むらさき」と呼ぶようになった、とか。

・いわしは、「卑しい」が転訛したもの、ほかの魚にすぐ食べられてしまうので「弱し」、水から揚がるとすぐ死んでしまうので「弱い」、などから転訛したとも言われます。

・古くは「海の牧草」とまで言われるほどたくさん獲れた魚ですが、昨今は漁獲量が激減しており、鮮魚、加工品とも国産であれば決して安くはありません。 ただ、流通手段の発達から刺身でも煮ても焼いても良く、 さらに加工品はスーパーなどでは定番的なものとなっています。

・カタクチイワシを正月に使います。「田作り」と言われ、縁起物として正月には欠かせない飾です。

〇鰯の梅干し煮 〇千葉の名物なめろう 〇つみれ 〇鰯の蒲焼 〇鰯の利休漬